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建築芸術の最大の特色は、他の諸芸術の多くが自然や人体の模写から出発しているのに対し、ほとんど最初から抽象芸術であったことです。しかし、自然や人体の特性は建築の表現力に深くかかわっています。すなわち、建築のボリュームは人体に対して大きいほど強い感銘や魅力をもたらします。逆に、小さい建物を美しく見せるには、それだけ微妙な細部の仕上げが必要となってきます。
空間(スペース)は、しばしば建築芸術のみがもつ一大特色とされますが、それは単に壁・床・天井に囲まれた空気にすぎない抽象的空間に意味があるのではなく、囲んでいる壁・床・天井に施されている意匠によって、その空間の表現がもたらされているのです。
空間はまた、中庭や広場のように周囲だけが囲まれ、上方のみ天空に開放されている場合にも、周囲の意匠がその空間の性格を決めています。このことは、列柱廊(コロネード)やアーケードや格子のような壁でないものに囲まれた空間が独特の性格をもつことからもわかります。
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構成(コンポジションcomposition)とは、建築の各部分の三次元的な組合せの調和ですが、その効果は比例(プロポーション
proportion)とスケール scale(人間との対比から決まる大きさ)に依存しています。比例は,全体と部分・部分と部分との大きさの割合であり、ギリシア建築に起源をもつ古典様式では、比較的単純な数学的比例体系が全部分を包括していることが尊重されていましたが、より直観的な比例体系をもつ様式も少なくありません。 |
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