〈建築〉という用語は比較的新しく、1897年(明治30)に造家(ぞうか)学会が建築学会と改称してから公認されたもので、建築学者の伊東忠太がアーキテクチャー
architecture に対応する新語として提案したものです。それまでは、土木建築工事一般を「普請(ふしん)」、建物に関する工事を「作事(さくじ)」と呼んでいました。
単なる建造物 building,structure に対して、アーキテクチャーとは一定の芸術的様式をもつ建物一般をさす集合名詞であり、かつ、それらをつくりだす建築技芸の体系を意味するものです。すなわち建築術あるいは建築芸術の意なのです。しかし、日本での〈建築〉という言葉は、伊東忠太のこうした意図にもかかわらず、今日でも主として建造物・建築工事の意に用いられ、建築を土木から区別する役割しか果たしていません。
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