寺前則彦設計室
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今後益々高齢化が進展するなかで、高齢者をお世話する施設は、ナースコールつきの老人に使いやすいアパートと、在宅医療福祉サービスセンター、ならびに専門性の高いナーシングホームであると思います。

欧米で普及しつつあるナーシングホームとは、お年寄りがケアアセスメントしてもらうために、せいぜい2〜3週間しか入院しない本当の老人医学専門病院です。

ナーシングホームは、本人の話を中心にして、その本当のニーズを把握した上で、人生の最後の時期のもっとも望ましい生活環境について方針を立てるものです。

ケアアセスメントの結果、いろいろのサービスを受けながら自宅でターミナルまで生活するか、ナーシングホームが紹介するケア付きアパートに引っ越すか、あるいは本人が体験入所した上で、自分にあった愉快な老人ホームに入所するかを決めるのです。

痴呆性老人の場合、脳血管障害からくる痴呆にしろ、脳神経細胞の病気からくる痴呆にしろ、はっきりしてきたのは、95%の方の五感の仕組みが最後まで正常であるということです。

したがって、痴呆性老人にうまく爽快感をもたせれば、本人の痴呆は治りはしないけれども、完全に本人が落ち着き、笑顔になって、かなり長い間ADLが下がらないばかりでなく、ある程度までプライマリー反応も戻ってくる。

つまり本人が決まり切った言葉や動作で、やや普通の生活ができるようになり、興奮気味の暴力行為や不潔な行為といった異常行動が嘘のように消えるといった研究が報告されています。
”文化は贅から始まる”と言われます。

 

それぞれの時代、それぞれの国の文化レベルは、そこに生きる女性が着ている衣装の色合いやデザインの質の高さから評価できる、と言っても過言ではありません。

現役をリタイアした後、老化現象のために肉体はだんだん衰えはしても、おしゃれによってそれをカバーすれば、自分らしい姿を守ることができます。

真のケアのベースはそこにあると思います。障害老人が時間をかけて、自分自身について直接的な自信を持てるように、ケアワーカーや周囲の人たちに手伝ってもらいながら、おしゃれをする努力こそ、最高の、そして最後の、人間らしき活動なんだと思います。

いずれにせよ、一口に高齢者と言っても、介護支援の必要度や要介護度、ADLが多種多様で、まだ現役で充分通じる方もいらっしゃいます。

そんな方には汗をかく爽快感や、生産の喜びを得られるよう、狭くてもよいから菜園付の住宅を供給できればいいなあ!

また、介護判定は自立であっても、自宅での一人暮らしや高齢夫婦暮らしに不安を抱える方にはシルバーハウジングプロジェクトによる団地の1室やシニア住宅を!

さらに、要支援の方にはプライバシーが確保された共同生活を楽しめるグルーピィングあるいはコレクティブハウスや、痴呆が始まった方には進行を遅延させる共同生活住宅グループホームなど、ADLの状態や介護度の度合いに応じた住居が必要となってきます。

公共住宅として対応するヴァリエーションがどの範囲なのか?各自治体によって答えは様々です。